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影千代の率いていた後方の陣を頼りに、
城に戻るため雷蔵と環は体力の続く限り敵を討ってゆく。
気付けば既に朝焼けが空を薄紅色に変えていた。

敵の陣は増えるばかり。まさに四面楚歌である。
二人の披露もピークに達し、手の出しようがない状況になってしまった。



「環!そっちはどうだ!?」

「雷蔵、こっちはもう敵陣に囲まれてます!城に戻るのは無理ですよ」

「これじゃあきりがねえな」

凄まじい地響きと爆音に、二人の動きが止まった。
城を見やると、激しい火柱が上がっている

「城が…」

環の瞳に真っ赤な炎がくっきりと刻まれた。

「どうなってやがんだ!?背後から仕掛けられたってのか?」

「後ろの陣は?影千代はどうしたんだ!?」

大勢の陣が攻め込む怒号が聞こえる。
陣内達が避難していた避難所の方からだ。
安否など分かりはしない。否、この分だと皆討たれたのだろう。
先程よりも明らかに敵の数は増えていた。

「ちくしょう!!!これまでか…!!!」

「おそらく…影千代も生きてはいません…僕たちも覚悟を決めましょう」

「だったらタダじゃ死ねねえな…環、お前の残りの爆薬、それ全部体に巻きつけて敵陣に突っ込むぞ!!!」

「わかりました!!」

環が懐に手を伸ばした時、前方から声が聞こえた。

「雷蔵!環!」

「影千代!?生きてたんですか?」

「お前の陣はどうしたんだよ!?陣内様は?」

「城は落ちた。…しかし陣内様から最後の命が下った。この場から離れるぞ」

「何いってやがる?しっぽ巻いて逃げろってのかよ!?」

「冗談じゃない!僕達は御庭番です。城が落ちたなら消えるまでだ!!!」

興奮する二人を制すように影千代が叫ぶ。

「陣内様から命が下ったのだ!この戦いから脱出し、何があっても行き抜け。と…」

「そんな…」

「冗談だろ?」

「主の命令は絶対だ!…ともかく、ここから脱出するぞ!!」


城は落ちても尚、敵陣は勢力を増して周囲を囲んでいる。

疾走する三匹の瞳には


燃え落ちた城の最後の姿がいつまでも焼き付いていた。



生き残ってしまった三匹の物語は
再びここから始動してゆくのだが…

それはまた、別のお話である。





大江戸御庭番風聞録「出雲篇」完。

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