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お静の懐からギラリと光る短刀が出てくるのが見えた。


カキン!!!


高い金属音が緋杜の数センチ前で響き、真横の壁にお静が手にしていた短刀が突き刺さる。
お静の体も緋杜まであと半歩の距離で止まっていた。

お静の耳元で彼女を羽交い締めにしている少年が囁いた。
「せっかちさんはね、寿命を縮めるって知ってました?」

手元の短刀は、雷蔵の鎖鎌が弾いていた。

「これは一体どういうことだ…」

あっけにとられる緋杜に雷蔵はニヤリと笑う

「お仕事だよ若様。あんたの城を守るためのな」


お静は隣国の城から出雲の調査に送り込まれたくノ一だった。
女の動きを誰よりもよく見ている雷蔵は
お静の動きが他の女と違うことを見抜き、彼女に情報を探る時間を与えない為
まかないの仕込みが始まる空け方まで
お静との逢瀬を繰り返していた。
影千代、環も雷蔵の様子からその事実に気付いていたので
問いただすことも、注意することも無かったのだった。

「5ヶ月も同じ生活してりゃあ、わかってくれてると思ってたぜ。
まさか自分から危ねえ橋を渡ろうとするとはな…正直焦ったぜ今回」

「仕方なかろう。緋杜様は忍びではない。察知しろという方が無茶だ」

「だけど緋杜様のお陰でこんなに早く解決できたんですから、良かったじゃないですか」

富士山よりも高いプライドが砂煙をあげて崩れていく。

驚きと恥ずかしさで顔から火が出そうな緋杜は
そそくさと自室に帰り、一週間近くも仮病を使って三人と顔を合わす事は無かった。


季節の移り変わる
冷たい風が吹くある日の出来事であった。

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