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突然声を荒らげた緋杜に環と影千代の体が強ばった。
「仲間が夜な夜な姿を消す事をおかしいとも思わんのかと聞いておるのだ!!」

「緋杜様、お言葉ですが我ら御庭番は許可無く城外への外出が出来ません。
城外へ出て行ってしまったわけでは無いかぎり
いざという時にも仕事に差し支えないと思われますが…」
畏まったように影千代が言葉を挟んだ。
「僕も夜廻り中に何度も場内で雷蔵を見ていますし、場外の者に情報を流している素振りもありません。
夕食を食べないだけなのに、何故そんなに怒ってるんですか?」
環も続く。
緋杜の苛々は激怒に変わった。
眉間に深く刻まれたシワは般若を思わせる程の形相である。

「お前達に足りないものは責任感だ!!連帯感というものがまるで無いではないか!
父上はあらゆる襲撃から城を守るため三人まとめて御庭番に就任させたのだぞ?
いざという時雷蔵の居場所すら掴めずに居て一人前に任務が遂行できるとでも思っておるのか?
思い上がるのもいい加減にせい!!」

捲し立てるような緋杜の怒号に
緩んだ環の口元から卵焼きがこぼれ落ちた。
「環…はしたないぞ」
影千代が小声で窘める。
そして今にも血管が切れてしまいそうなほど頭に血が上った若君をなだめるかのように
「申し訳ありません。緋杜様の仰るとおりでございます。
今すぐに雷蔵を見つけ出して参ります。…行くぞ環」
と目線で環に合図を送った。
環は茶碗に残った白米と味噌汁を一気に掻き込むと
納得のいかない様子で、皿に残ったおかずを恨めしそうに見つめながら影千代と共に部屋を出て行った。

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